☕️ あっちゃんババの公園〜コーヒーの香りに誘われて〜

キッチンカーのお話

先日、私のコーヒーのキッチンカーがとある公園に出店した日、ちょっと胸が温かくなる出来事がありました。
その主役は「あっちゃんババ」。私の親戚にあたる、小さくて元気なおばあちゃんです。
この日あったことを、少しだけ綴らせてください。


懐かしい人が歩いてきた日

太陽の陽ざしがぽかぽかと優しく降り注ぐ午後。
私はいつものように、公園の一角でコーヒーのキッチンカーを出店していました。豆を挽く音とともに、香ばしい香りが立ちのぼり、お客様とのやりとりがゆるやかに流れていく、そんな穏やかな時間。

そこへ、思いがけない人がやってきたのです。

あっちゃんババ――姉の義母にあたる人で、私にとってはちょっと遠い親戚。でも、姉が結婚した頃からその可愛らしい雰囲気と明るい人柄に惹かれて、私は密かにファンでした。

なかでも、あっちゃんババの“カラオケの腕前”は家族の中でも有名でした。
演歌から昭和歌謡まで歌いこなし、マイクを持つと雰囲気が一変。歌い終わったあとの照れ笑いがまたたまらなく魅力的で……その姿を思い出すたび、今でもほっこりします。

作戦!

でも、最近のあっちゃんババは、すっかり外出を控えて家にこもりがちだと聞いていました。
そんなとき、私のキッチンカーが偶然にも、あっちゃんババの家の近くの公園で出店することに。

すると、姉と義兄が「これはチャンスだ!」と作戦を立ててくれたのです。
義兄が車で迎えに行くという段取りで、私も内心ドキドキしながら待っていました。

けれど、なかなか姿が見えない……
やっぱり今日は難しかったかな、と諦めかけたそのときです。

公園の奥から、小柄な女性がゆっくりと歩いてくるのが見えました。

それが、あっちゃんババでした。

変わらない明るさと、ほんの少しのきっかけ

10分ほどの距離とはいえ、足が弱っているあっちゃんババが歩いて来るとは思ってもみなかったので、驚きと同時に胸が熱くなりました。

「キッチンカーを始めたと聞いてね。ちょっと見てみたくなっちゃったのよ」
そう言って笑ったその表情は、何年経ってもあの頃と変わらない。明るくて、好奇心いっぱいで、ちょっとお茶目。

あっちゃんババのその一歩が、私にとっても、きっと家族にとっても、とても大きな一歩に見えました。
もしかすると、私のコーヒーキッチンカーが、彼女を外へ連れ出す小さなきっかけになれたのかもしれません。

その日、公園の空はいつもより澄んでいて、コーヒーの湯気は心なしか甘く感じられました。


最後に

人生って、不思議なもので。
ちょっとした偶然と、ほんの少しの思いがけない行動が、誰かの一日にそっと光を差し込むことがあるのだと、あの日改めて思い出しました。そういえば、自分にもあったな・・・

あっちゃんババ、来てくれてありがとう。
またいつか、あの頃みたいに歌ってくれたら嬉しいな。


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